小学校の教科担任制のメリットデメリット!文部科学省の方針とは?

教科担任制は、負担軽減や授業の質向上になるのか?小学校の教科担任制は中学とは違う?

コロナ禍の2020年が終わろうとしていますが、学校教育の在り方が問われた一年でした。

休校に伴い、学力の低下が心配され、リモート学習や授業など新たな学習の仕方が注目されています。

文科省は令和4年から、小学校での教科担任制を本格導入する予定です。

小学校での教科担任制は実は今までも行われた学校や学年は多くありますが、それは現場の先生方の指導の工夫として実践されたものです。

いずれ実施されてくる教科担任制についてのメリットとデメリットを取り上げてみました。

何事にもいいところ悪いところはありますが、現状の小学校の教育体制を考えると、教科担任制に取り組むことは前進かなと思っています。

文科省も方針は方針ですが、学校ごとに取り組むことだってできるのがこの教科担任制です。小学校の先生は全教科を教えることができるのですから、いつでも実施可能なのです。

小学校の教科担任制にチャレンジしてみましょう。

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小学校の教科担任制は中学校とは全く別物ととらえること

小学校の学級担任制のメリット

中学校は、生徒が基本的な生活を自ら律することができるということが前提です。ですから、小学生のように基本的な生活習慣を培う段階の子どもたちには中学校のような体制はそもそも無理です。

小学校が教科担任制をあえて実施していないのは、子どもたちに、専門的な教科学習ではなく、教科を超えた生活の基本的な学習を大事にしているからでしょう。

また、子どもたちの成長を場面ごとに評価していくのではなく、様々な場面での子どもたちの成長を総合的に評価していくことで、その子の学びに寄り添えるという大きな利点があるからです。

ひとりの担当者が継続的に指導することで、その子自身をより広く深く知ることができ、それが指導に生かしやすいことです。

さらに、落ち着いて生活していくことができるには、同じ人が関わるほうがより安心して生活できます。その子をよりよく知ることで対応がより適切になるのは言うまでもないことです。

ちょうど、母親が子どもを見守りながら育てるように、より身近な人が専任することでその学級の課題を的確につかみ、タイムリーに指導することができるからですね。

これが小学校の学級担任制の非常の大きなメリットです。

小学校の学級担任制のデメリット

この学級担任制は一人の教師の力量によるところが非常に大きいので、的確な指導ができないとそれを補う人がいないということになります。

学級をどう育てていくかはそれにかかわる大人の影響力があるのですが、それを一人で判断し進めていくためには、相当な見識や経験さらに的確な指導がどうしても必要です。

昨今、学級崩壊が頻繁に起きています。

それは、一人の先生の指導内容が子どもたちの実態に合わせられないことや子どもたちの未熟さが問題であると思っています。

教師は小学生の成長発達段階から見てカウンセラー的な対応をする必要があります。一斉指導についてこれない子どもや発達障害を抱える子どもなど、集団指導を中心としている学校教育においてはより細かな配慮が必要になってきています。

それを一人の教師が多くの配慮をしながら、全体を見極めて支援していくことは本当に大変なことです。しかし、それが可能なのは、子どもたちがお互いに協力し合い、支えあって生活していくことができているからです。

そういう集団にしていくことが学級担任の重要な役目です。

これが小学校の教師は、教科の専門性よりも教育の専門性が大事であるということにつながるのです。

ところが、この大事なスキルが乏しい教師や精神的に未熟な子どもたちの増加により、学級集団が学びの集団に育つことが難しく、ただの集まりなっている学級が崩壊しやすいのです。

まとめると、小学校の学級担任は多くのスキルを持ち得ることが必要で、子どもたちを学びの集団に育てることがとても重要な仕事ということです。

言い換えれば、担任が躓けば子どもたちも躓いてしまうのです。

そうならないためにも、多くの先生方に教えてもらうことで、その失敗を食い止めることになると考えます。

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小学校の教科担任は以前から行われている

私が小学校の教科担任制を経験したのは、平成が始まったころです。

その時の小学校の校長先生が先を見る目があったのか、国際社会に向かう中では異質なものを受け入れる姿勢が大事であることを話されていました。

学校の合言葉が「感謝と奉仕」でした。学校の廊下や教室にこの言葉が貼られていたのを思い出します。

これからの社会で大事にしていくことは、感謝性と奉仕性だということで、学習においても生活においてもその考え方をどのように実践していくかに重点が置かれていました。

そんな学校だったからなのか、5年6年と二年間は教科担任制を取り入れて指導しました。3クラスの学年でしたが、次のような担当でした。

理科、社会、図工だけだったと思います。

当時の小学校では、理科の専科は少なく、担任も理科を教えていました。この教科にしたのは時間数の調整からこの3教科にしたはずです。図工だけ少ないので、国語の書写も教えていました。

この取り組みで一番勉強になったのは、自分以外の教師が学級の様子を把握して、生徒指導に生かしていたことです。私は、駆け出しの教師だったために生徒指導が上手にできていなかったために、ちょっと学級の雰囲気が傾きかけていて、その変容を学年の先生から指摘され、かなり反省したことを覚えています。

本当に学級経営の至らなさを指摘されて落ち込んだことを昨日のことのように覚えています。毎回教科指導に入るからこそ見える子どもたちの姿だったのです。

それも同じ学年の先生が継続的に指導するのですから、自分の学級の子どもたちとも比較できるわけです。変化に気づくのはその比べるものがあるほうがより分かりやすいものです。同じ学年のことなので余計にわかりやすいのだろうと思います。

あれから30数年、小学校の担任を続けてきましたが、教科担任制を本格的に経験したのはあの時だけでした。

どうしてその後はそうしたチャンスがなかったのか?小学校は学級担任がすべてを教えるほうが楽だからともいえます。全部を教える手間はマルチプレーヤーのようですが、慣れてしまえば同じことの繰り返しですし、何と言っても自分一人でどうにでもなるという感覚があります。

おそらく、どんな仕事も始めが大変なわけで、慣れてしまえば普通になります。

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中学校は学校体制がすでに小学校とは全く別物

教科指導が中心で、子どもたちの一人一人の行動にあまり手をかけられません。

子どもたちも自立していることが前提での生活ですから、先生が面倒を見てくれるというよりも自分たちでできないと物事は前に進みません。

ですから、学級でまとまるというよりもまとまる必要などそれほど大事なことではありません。それよりもみんなに迷惑をかけないとかお互いに協力すべきことはするという大人の行動が求められます。

自分のやるべきことをちゃんとやることが非常に大事なわけで、それができているならば基本的に学校生活に支障はないでしょう。

例えば、勉強ができないわからないのは先生のせいなのではなく、その子自身の問題になりやすいです。先生に反抗することはありません。

学校生活のレベルについていけないなら逃げるという方向に行動していくからです。

それが非行であったり、学校を休むという行動になっていったりするのです。

中学校では授業を受けないとか、先生に反抗するという行動がありますが、それは先生の態度や姿勢があまりにも一方的で理不尽な場合に起きています。

また、学級内の上下関係なども本来あるはずはないのですが、子どもたちの中の優劣によって、言動力のある子が身勝手なことをし始めてしまうことで、力関係がどんどんエスカレートしていきます。

それが学級の雰囲気を変えたり、いじめのきっかけになったりすることは言うまでもないことです。

中学校は学級担任の先生も小学校とは異なり、子どもたちの世話をいちいちすることはできません。

しかし、小学校はそれがまだできるところが担任の存在の大きいところであり、そのよさを生かして指導にあたることが発達段階に適した対応であり、そうした対応をできるようにしていかないと子どもたちに寄り添った指導とはならないでしょう。

教科担任によっていろいろな大人の影響を与えることが大事

いじめの原因は先生ではなく、集団の性質によるところが大きいでしょう。素直な子どもたちの学校では、中学生は友好的で思いやりにあふれ、希望に満ちています。

どうしてそうした子どもたちが育つのかというと、やはり環境でしょう。

家庭環境もさることながら、地域の目や地域の大人たちの心でしょう。

こう考えていくと、子どもたちには何が必要なのかというと、それは健全な環境でしかありません。

その健全な環境をつくるのは、子どもたちではなくその周りの大人たちの世界です。

どんな大人が自分たちの周りにいるのか。それが子どもの世界をつくっているということだと思います。

小学校にも多くの先生がいて多くの大人がいるわけですが、何か関わりがない限りその先生の影響を受けることはまずありません。

高学年では、児童会やクラブ活動で学年以外の先生とかかわることがありますが、そうした活動を通して子どもは身近な大人の一人ができるわけです。

教科担任は確実にかかわる大人の一人になります。学級担任制の学年の先生方でも教えてもらうことはほぼないのですから、意識する存在になります。

ひとりの先生ではなく、多くの先生に教えてもらうことで学校内に親密な大人が増えるわけですから、子どもたちの相談相手にもなり得るわけです。

ひとりの先生の影響だけでなく、いろいろな先生の教えを受けることで、問題が解決する可能性は高くなります。

学級担任も自分の学級という責任は大事にしつつも、他の先生から指導を受けることで共に学級を育てるパートナーとして位置づけれはいいのです。

なんだかんだ言っても、小学校の教科担任制も一年もやってみれば、はじめの壁はなくなるでしょう。そして、教科担任制のやり方に慣れるでしょう。

学級崩壊やいじめを解消することにつながる可能性あり

小学校でも一人の学級担任がすべてを担っていますが、一人の先生に教えてもらうメリットがたくさんあるとは言えません。

小学校に限らずよい指導やよい学級経営は、教師の力量によるところが大きいのではないかと思います。

ということは、いい先生にあたればうまくいくが、そうでないと子どもがかわいそうということになります。しかし、これはありうることです。

教科担任制になっても、学級担任は存在し、学級のまとめ役は学級担任です。一人の先生の影響が重大で責任も大きいのですが、多くの先生方に毎時間指導してもらうことで多くの目で子どもたちを見守ることが今以上に可能になります。

学級担任制ではどうしても学級担任に依存してしまう傾向を教科担任制では改善できます。

子どもたちもいろいろな先生の指導を受けることで、頼る先生が学級担任の他にもあることが問題を解決する手立てになっていくと思います。

もちろん、教科担任の先生も授業を教えるだけでなく、学級担任のように子どもたちの全般的な指導にもかかわるという構えがないと小学校段階では物足りない存在になってしまいます

専科の先生のように授業だけにかかわるのでは、結局担任の責任だったり負担になったりと本末転倒です。

中学校とは相手が違うのであるということを前提にした教科担任制であることを大事にしなければいけないでしょう。

形だけ教科担任というものになりやすいので、例えば、5年生と6年生で教科担任制を実施するのであれば、この連学年が常に一緒に連学年会として調整や協議をしたり、さらに全員で子どもたちを教えていくという心構えとその体制づくりが欠かせないでしょう。

小学校の教科担任制のメリット

小学校と中学校の教師の違いを次のように例えることができます。

中学校では教科の専門性が必要で、

小学校では教育の専門性が必要である。

教育の専門性というのは学習だけでなく生活全般に渡り、指導していくスキルが必要になってくるととらえています。

小学校は社会生活の基礎を養うという意味でも、学校生活を通していろいろな活動や学習を経験させることで学びの土台をつくるということになると思います。

小学校は学びの基礎的な土台をつくるのが大切ですから、子どもたちに多くの経験や体験をさせることが必要です。どんなことにその子の関心が高いのか、どんな支援をしていくことでその子のよさが伸ばされるのかを多くの場面から見ていくことができます。

学級担任が多くの場面を通して指導支援していくことができるので、子どもへの的確な見方が可能です。また、学級集団を学習集団に育てていくには、一日の生活を共にする中で子どもたちの課題や問題点をつかみ、総合的に判断することが必要です。

学習や生活の基礎基本を育てるには、一人の人間が継続して指導するほうが子どもたちにも理解しやすいでしょう。スポーツの世界においても、監督やコーチの方針や指導によってチームがつくられるように一人の指導者の指導方針が的確に伝わりやすいということです。

小学校は、知識も経験も高度ではありません。むしろ、基本的なことを的確にできるようにするには、教科の専門性よりも学び方の基本的な部分を徹底して指導することが、中学以上の学びにとって非常に大事だと思います。

そのためには、小学校の学級担任は多くの話題や引き出しを持っていることが要求されます。子どもたちの意欲や関心を引き出し、学習することのよさを感じ取らせることがとても大事です。

小学生の時期は、いわゆるしつけです。中学生以上になって、自分で判断し行動する力が備わっていないと勉強も生活も向上していきません。

ですから、徹底して基本をたたきこむことが本当に重要なことです。特に小学校の低学年の時期は非常に影響を受けやすい成長段階なので、多くの先生に教えてもらうよりは、一人の先生に継続的に指導を受けることで、その子の気持ちに沿って支援をしていくことができると言っていいでしょう。

小学校の教科担任制のデメリット

小学校で教科担任制は限られた学年だけのものととらえています。

そもそも発達段階として未熟な低学年と思春期を迎える高学年と同じスケジュールで生活することは難しい部分があります。

時間をきちんと区切って生活できるとしても、判断力や思考力が育っていない状態で枠に合わせて生活することに無理があるでしょう。

中学校のように学習中心な学校生活に比べ、バランス重視の生活をしている小学校は学習も大事ですが、それ以外の部分に多く指導が注がれます。

ですから、教科担任制は必要とはされてきませんでした。

およそ以下のようなデメリットが考えられます。(低学年の場合も含めての考え)

  • 低学年の1年生に時間割通りに生活させるには、かなり多くの支援が必要
  • ひとりの担任が継続的に生活を支援するということができない
  • 多くの教師が子どもたちの指導者になることはよいが、情報交換が日々欠かせない
  • 算数などの少人数学習が実施困難になる
  • 教科などの指導時数が学年で大きな差があり、高学年の5年生以上での実施が妥当
    ※文科省の方針参照
  • 現在の小学校のカリキュラムは学級担任制を前提に構成されているため、担任の裁量による時間の調整が可能であるが、教科担任制になるとそれができなくなる
  • 低学年の時間割と高学年の時間割の大きな違いは指導時間であり、下校時間も異なる。そうした違いを調整しても非常に煩雑な業務体型になりやすい※文科省の方針参照
  • 個々に行ってきた宿題のチェックや日記の返事などが時間的にできなくなる
  • 授業時間はきちんと消化されていくが、一時間ごとの重要性がより厳しくなるため教師のより均等な指導力が求められる(子どもたちに確実に理解させていくということ)
  • 教科担任制の5年生6年生のカリキュラムを優先した学校運営になる可能性が高い

このようなことが考えれるのですが、何事にも長短はあるのですから、よさを大事にして取り入れるということになってくると思います。

教科担任制にかかわる文科省の方針について

肝心の文科省の方針が以下のようになっています。

文部科学省は2019年12月26日、中央教育審議会初等中等教育分科会での「新しい時代の初等中等教育の在り方 論点取りまとめ」を公表した。義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方については、令和4年(2022年)をめどに小学校高学年から本格的に導入すべきとしている。

「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」は2019年6月27日に第1回を開催。時代に応じた教師の在り方や教育環境の整備などについて第5回の11月開催まで検討し、このたび取りまとめた。

新しい時代を見据えた学校教育の姿(2020年代を通じて実現を目指すイメージ)として、子どもの学びについては「多様な子供たちを誰一人取り残すことのない、個別最適化された学びが実現」。子どもの学びを支える環境として、「全国津々浦々の学校において質の高い教育活動を実施可能とする環境が整備」されること。

この文科省の方針は大まかなもので、まだまだ準備期間です。たぶん、具体的な取り組み方は学校ごとに任されることになるでしょう。

新しい時代を見据えた学校教育の姿は大事ですが、質の高い教育活動というものについては環境整備が欠かせません。教師の力量や学校運営のように現場の工夫に頼るのではなく、物理的な支えを国にはお願いしたいものです。

国の研究指定を受けた学校が試験的に取り組み、その成果をもって答申がはっきりしてくるという流れです。トップダウン型ですから、現場はいつも受け身になりやすいですね。

現場では教科担任制を導入したいとは言ってないでしょう。教科担任制も悪くないのですが、それよりも教師を多くして、より多くの指導者を学校に投入するべきです。それによって、より細かな指導が可能となります。

多くの業務を抱えている学校現場では、仕事の分散や省力化が必要です。

やり方を変える(教科担任制)ことはいいかもしれませんが、マンパワーが不足していることが教育の質を低下させていることは事実ですから、教師がより専門的に教師の仕事に集中できるようにしない限り、質の良い教育は実現できないと思います。

公立学校の先生方はスペシャリストではありません。

どこの学校でも質の良い教育を求めるならば、先生たちの力量に任せるのだけでなく、お金をかけて人的支援をしなければ解決しない問題だと思っています。

まとめ 小学校での教科担任制はすぐにやってもいい

小学校も中学校も現在の多忙な勤務環境はそれほど違いはないでしょう。

中学校での一番の問題点は、学力の格差です。

小学校時代の学力の上に中学の勉強がありますが、小学校での学力不足を中学校では解消できないのが現状です。

小学校で基礎を築くには今の小学校の教育体制ではもう限界です。人的パワーも減少しました。力量を求めるにも、仕事改革をしないと質のよい教育はもうできないだろうと思います。

教科担任制を取り入れて教育の質を改善するという方針は悪くありませんが、きちんと人員を増やし、無理のない体制ができるように国が大きな支援をしてくれないと、中身の変わらない形だけのプロジェクトになってしまうでしょう。

しかし、何かを変えるにはやり方を変えることが一つの方法です。

教科担任制は小学校のねらいを持って取り組めば、大いに成果が上がるはずです。

教科指導だけでなく、子どもたちの心の支えになったり、いじめや学級崩壊を防ぐことにつながるという大事な部分も担うと思います。

ぜひ、試験的にも行う価値はあると思います。

はじめからうまくいかないものですが、やらないと課題も見えません。

仕事改革にもなる小学校の教科担任制に取り組んでみてはいかがでしょうか。

小学校の教科担任制のメリットデメリット!文部科学省の方針とは?のお話でした。最後までお読みいただきありがとうございました。

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