小学生の宿題の最大の目的は、学習習慣をつけることにあります。
小学校時代に家庭で毎日宿題を決まった時間に実行できる子どもはその後の学校生活でもその習慣が生かされ、学習に進んで取り組むことができるようになります。
これは、長年子どもたちを教えてきて、どんな状況の子どもがどんな道を歩んでいるかを見てきて、確かに言えることです。小学校時代の宿題への取り組み方がいかに大事であるか。宿題なんていらないとか、自主学習で十分とかいう先生方もいますが、宿題はただできればいいのではなくて、学習に向かう姿勢を育てることにつながります。
大事な宿題をやり遂げる力をつけてやるには、教師の地道な指導が必要です。しかし、教師の仕事は多忙を極め、いかに効率よく仕事をしていくかが大事です。
宿題は毎日の繰り返しと積み重ねで宿題をやり遂げる力が養われます。でも、毎日30人程度の児童の宿題をチェックして評価していくことは簡単なことではありません。
どんな宿題を出すかは、子どもたちの何を鍛えるのかというねらいも大切です。どうでもいい宿題というのはほとんどないですが、出さないほうがいい宿題というものはあります。それは、教師がチェックしきれない宿題なのです。
宿題は毎日の課題です。教師もこの宿題を子どもたちと同じようにチェックし続けることが必要です。どんな宿題を出し、どうチェックしていくかを細かく紹介します。
宿題は毎日出すことで、子どもたちは宿題の量や内容に慣れていく
宿題は毎日同じくらいの量を出します。日によって宿題の量に軽重があるのは力になりません。
たとえば、
- 漢字練習2ページ
- 計算ドリル1ページ
- 国語の音読3回以上
- 生活記録(日記)
この例のように、毎日同じようなことを与えることで慣れていきます。また、慣れるということは時間内に宿題をできるようにもなります。ですから、子どもたちはこのような宿題が楽になっていきます。宿題が楽になっていくことが一つの目標です。この目標は、子どもではなく、教師側の目標です。次の指導へのステップとしてとらえるのです。
宿題の内容や方法はいろいろなねらいがありますが、まずは、できるようになることです。
できないような宿題は子どもが嫌になるだけです。やってこれない宿題は出すべきではないです。
宿題の目的は復習(復習だけはなくて、予習だったり、調べ学習などもあります)と習慣づけです。
子どもは宿題ができることで自信をつけます。できたことで喜びになります。わからない、できないということにならないように実態を見ながら、適切な宿題の内容を与えていきましょう。
ただし、宿題の内容が楽すぎるとほとんど意味がないです。やっても力にならないような、あまりに楽にできてしまう内容は出さないことです。子どもたちはラッキーと思うこと多いですが、高学年になってくるともうできるからやらなくてもいいじゃないかと思うようになるからです。低学年でもそれだけの思いがでてきたら、楽すぎる内容は出さないほうがいいです。
大事にしたい宿題は。今日の授業の復習になるような内容や過去のことを復習する内容、さらには、これから習うことの準備としての準備体操的な内容を与えるといいです。
といっても、毎日こんな適切な内容を宿題にすることはなかなか難しいものです。だから、同じような宿題でも繰り返すことで宿題をやりとげることができるようになるのですから、ドリル的な学習が多くなります。
宿題は、教師の指導方針がそのまま出ます。ですから、どんなねらいで宿題を出すのかどんな内容なのかをはっきりとつかみ、一定期間でその成果を見ていきます。
大事なことは、
- ねらいをはっきりともつ
- 子どもができる内容にする(復習がよい、その日の学習をその日のうちに復習する)
- 最低三週間以上は続ける
子どもたちは、慣れると文句は言いません。はじめのうちだけは文句がでます。続けるとできる子どもたちが増えてきて、それが当たり前になってきます。そうなるまで我慢です。
宿題で出さないほうがいい宿題。それはどんな宿題か。
宿題で出さないほうがいい宿題とは。結論から言うと、教師がその日のうちにチェックできないようなものは出さないほうがいいということです。
これは、どういうことかというと、教師の一日は多忙を極めており、一人一人の宿題を見てやる時間は授業や給食の合間です。
次の日に宿題を返すとなると、ノートやプリントが山のようにたまります。子どもが帰った後でゆっくり見るなんてことはなかなかできないものです。
気がつけば、すでに退勤時間は過ぎ、それから見るだけでも一時間はかかってしまいます。ましてや、授業の準備やテストの採点などもあります。自分で自分の首を絞めることは避けたほうがいいのです。
ということで、どんなものを出さないほうがいいかというと、
- すぐに採点できないもの(30人一人一人見ていたら、授業の合間には終わるわけはない)
- すぐに丸が付けられないもの(教師がしっかり読まないとわからないものは時間がかかってしまう。しかし、漢字練習は慣れてくるとすぐの誤字脱字は瞬時に見分けられます)
- プリントは返さなくてもいいという心理が働き、たまってしまう。プリント類は処理の仕方が大事。
とにかく、教師が子どものために出すのですが、責任は教師にあります。
教師が自分で出した以上、きちんと評価することが大事です。
宿題は子どもたちが必死でやってくる場合もあります。ですから、その日のうちに評価して返してやることで、すぐにその成果を実感でき、できた子は自信をつけていくことにつながります。
宿題はねらいが大事と申し上げました。日々の宿題は、習慣化を目指し、地道な繰り返しでコツコツと力をつけさせていくことにあります。継続は力なりです。
宿題の内容 その日の復習 質より量
宿題の内容は、一番いいと思うのは、その日の学習の復習をさせることができるといいです。しかし、毎日そんな適切な内容を復習させることは難しいので、ある程度の形が必要になります。それが、繰り返す学習です。その日の授業内容ではなくても、過去にさかのぼって復習させていくのです。
漢字練習もどこのページからどのページまでとか、計算ドリルも過去のページをやるなど、子どもたちが何をどうするかがわかることが大事です。
復習などは、高学年になってこないと難しいと思いますが、やり方を授業できちんと教え、やり方を確認させたうえで実施します。何でものいいというような指導は結局一人一人に細かな指導が必要になり、教師の負担が増えたり、子どもたちに力がつかない宿題になる可能性大です。
復習のさせ方は次のノートの例を参考にしてください。
復習はノートでさせます。これが基本です。ノートを上手に使えるようになると、学習意欲が向上します。それは、ノートの使い方を評価され、学習の跡がきちんと残り、子どもたちが見てわかるからです。
宿題はどうできたかもとても大事なことです。だから、ノートの使い方も指導できるので、宿題はノートでやるということが大事なことです。
最低でも、漢字練習帳と宿題用ノートがあるといいです。
宿題用のノートは、算数でも社会でも使えるように、方眼式のノートがおすすめです。
チェックと評価 その日のうちに評価する
前述したことと重なりますが、宿題は、教師がその子の宿題のあとをきちんと見てチェックすることがとても大事です。
見ないで返却はタブーです。子どもたちが宿題をサボる原因となりますので、とにかく見たということは大事なこと。シールでもスタンプでもいいので、必ず見てあるよというサインを出すことが必要で、肝心なことです。
では、いつこの宿題を見るかというと、一番いいのは、朝、子どもたちを教室で迎えた時にどんどん目を通して、チェックしてしまうことです。
ありとあらゆる時間を上手に使って宿題の処理をします。低学年は空き時間があまりありませんので、朝のうちにやってしまうことができるといいですね。
それでもダメな場合は、給食の時間や休み時間を使ってやることです。教師の処理も慣れてくると短時間で済ますことができるようになります。はじめは大変でもそのうち慣れます。
私などは、高学年が多かったものですが、一日のうちに、宿題を処理するのは、大体、授業の合間に少し、給食の時間にほとんど、残りは掃除の途中になどで間に合わせました。
大事なことは、教師がその日のうちに評価できないような宿題の量や内容は出さないことです。
毎日ある宿題なので、コツコツ積み上げるということがとても大事です。
宿題で鍛えること 家庭学習の習慣をつけること
宿題で大事になることの最後のポイントは、やってこない児童やサボる子への指導です。
やってあるかどうかは、とにかく毎日チェックします。
はじめは、教師が全体で指導し、約束やルールを子どもたちに理解させます。どんな方法でもいいでしょう。とにかく、やってこない場合や忘れたらどうするかということを全員が同じように理解してあることが先決です。
やってこない場合は、その日のうちに学校でやらせることが必要です。家庭でもやってこないことをそのままにしないで面倒を見てくれるという親の教師への信頼につながります。
私は次のように対処してきました。
- やってこない場合は帰りまでに休み時間なしでやらせ、それでも終わらなければ残りはその日の宿題に追加
- うっかりノートを家に忘れた場合は、きちんと申し出てくれば次の日に提出してOKとする
- ごまかしてやってきたり、あまりにも雑にやってくる場合は個別に呼んで注意を与える
- これらのことを続けながらも改善が見られない場合は、家庭に電話をして親に現状を話し、ご家庭でも少し目を配っていただけるとありがたいとお願いした
こんなふうに取り組んでいましたが、ほとんどの児童はやってくるようになるので、学級の人数の1割~2割の子どもたちへの個別の指導が必要ですね。
できれば、学級だよりなどでも家庭に知らせ、どんな宿題を毎日出すのか、忘れたらどうなるのかなどを保護者にもわかっておいてもらうことが必要でしょう。
小学校6年生といえども、幼い感覚の児童が多くなりました。家庭の支えがなくては宿題をやってこれない子どもたちは多くなったように思います。
折に触れて、宿題の取り組み方についても、実態を家庭に知らせていくことは教師の意図する方向に導きやすいと思います。
宿題をやることは、家庭での学習の習慣をつけることが大きな目標です。
その習慣づけは、毎日の繰り返しによってのみ、と言っていいでしょう。毎日の宿題は、教師の評価の連続です。一人一人の実態を見ながら、特別によい評価したり、厳しく指導したりして、その子に沿った宿題の出来具合を見ていってやることです。
まとめ
宿題の出し方とチェックの仕方をまとめました。
- 小学校の宿題の出し方は、意図的・計画的・継続的に
(子どもたちの習慣となるまで我慢して取り組むこと、成果は後でついてくる) - 宿題の出し方の基本は、その日のうちにチェック(評価)できるものを出す
(毎日チェックすることで子どもたちに隙を見せない) - 宿題はノートでやるのが基本
(プリントは返さない状況になりやすい。ノートの使い方の指導にもなる)
小学校の6年間で家庭学習の習慣をつけることができた子どもは、その後の中学、高校でも家庭学習に素直に取り組めるという事実が多くあります。反面、小学校で習慣化できなかった子どもは中学でも高校でも勉強をきちんとやりません。受験勉強すらも厳しい状況です。
先生、今日はちゃんとやってきたからね。と言ってくる子どもの心には、ちゃんと見てね。という見返しを期待する子どもの思いがあります。言わない子どもたちも同じように昨日一生懸命やったのだということをノートを通じて伝えてきていることが少なくないのです。
宿題をきちんとみて、返してやることで宿題を大事にする子どもに育っていくのでしょう。地道な教師の仕事ですが、こんな些細な積み重ねが子どもたちに宿題は嫌いだけど大事なものという勉強の心構えができてくるのではないかと思います。
好きで宿題をやる子は少ないでしょう。ほとんどの子どもが宿題をやりたくありません。でも、勉強しないでいるとできなくなってしまう。
教師はそのやりたくないけど、頑張ってやってきた宿題を丁寧に見てやることがとても大事なのです。その姿勢が宿題をやる子どもにしていくのです。
コメント
[…] 引用 元教師が考える小学校の課題と50歳からの人生目標 […]
忙しがっておりまして、返信遅くなりました。
稚拙な内容ですが、引用いただきありがとうございました。