学校の筆記用具と言ったら「鉛筆とシャーペン」がその代表ですが、シャーペンは小学校で使用することがほぼ禁止されています。どうしてでしょう?
それはたぶん、学校生活上いろいろと問題になりそうな状況を生み出す可能性があるからです。
シャーペンは小学校の学習用具として、学習には不適切であるととらえられています。もちろん、何か校則等で決まりになっていることはほぼありません。担任の指導によって使用を認めていないのがほとんどではないでしょうか。
国語学習で鉛筆とシャーペンをディベートの題材にしたこともあります。結論は出ませんでしたが、シャーペンが優位とはならないのが面白いところでもあります。
筆記具もどんどん新しいものが生まれ、使いやすくなり、中高生では鉛筆を使用している生徒は少ないです。
しかし、小学校ではシャーペンを認めたがりません。私も30年以上教師をしてきて、シャーペンを認めた学級は一度だけです。それも条件付きだったように思います。
子どもたちからもどうして使ってはいけないの?と質問されます。
鉛筆とシャーペンはどっちがいいでしょう。鉛筆とシャーペンのメリットとデメリットをあらためてまとめてみました。
小学校で鉛筆を使用するわけ
小学校では、正しい鉛筆の持ち方から始まり、ひらがなの書き方に移っていきます。
小学校一年生から鉛筆を使い始めますが、鉛筆がそのまま使い続けられるのは鉛筆の芯の硬さが適度であるからです。
ここにまず鉛筆とシャーペンの違いが出るわけですが、「きれいに書ける」ということよりも「書きやすさ」が優先されていることが大きいでしょう。
紙などの用紙に芯で字を書く場合、書きにくいのは紙と筆の抵抗がないことが考えられます。
ボールペンはインクによってボールが滑らかに回るので硬いものの上で書くとペンの先が動きすぎてしまって、実に書きにくいです。
そんな状態と同じで、鉛筆の芯が適度に柔らかいとか適度に硬いとかいう理由で安定します。
以前は、鉛筆の芯を削ることで刃物の扱いに慣れるという効果もありました。その行為自体が大事にされてきました。
しかし、刃物が教育現場に持ち込まれることで他の危険性を考慮して、ナイフ等で削ることはほとんどなくなっています。
さらに、鉛筆の場合、芯を削りながら使っていくことで、物を大事にすることや愛着を持つことなどに繋がっていますね。
鉛筆は芯を削ることが絶えず必要ですが、シャーペンに比べてはるかに芯が太く、滑らかに書け、さらに筆圧に耐えることができることもその理由です。
そのため、かすれたように表現することも可能ですし、塗りつぶすような場面でも使い勝手がいいです。
最近では、8Bとか10Bの極太芯の鉛筆を使用する学級・学校が増えているようです。
まるで筆字のように書けます。
止めとかはらいとかが実に見事に書けるうえに、だれが書いても美しく書ける書き方もあるようです。
鉛筆のあらたなよさが注目されています。
なんと、この鉛筆で漢字練習などの練習用に子どもたちが使っているようです。埼玉だったように思います。
小学校で書き始めのころから鉛筆を使用するのは、使いやすいということでしょう。
シャーペンは機械ですから、複雑と言えば複雑です。
教育現場で求められることの一つとして、余計なものは要らないということです。
鉛筆は、単純明快な文房具です。
鉛筆自体のつくりが簡単であることは、余計な心配をしないで済むということになります。子どもは何をするかわかりません。そのためにはどんな状況でも害を与えることや問題の種になるような要素はないほうがいいです。
鉛筆はこの点非常に質素で、実に子どもたちの学習環境に適合していると言えるでしょう。
シャーペンを禁止するわけ
小学校では、授業中にカチカチとうるさいという理由が昔ありましたが、そんなことは今ではほぼ通用しないでしょう。
どうして、シャーペンを使わせないかというと、子どもたちの文房具が悪影響を及ぼすということではなく、きちんと字も書けないのにシャーペンなんか使うなという考え方がどうしてもあるからです。
そもそもシャーペンは鉛筆より高価で小学生が使うにはいろいろと問題になる要因がありました。また、昔のシャーペンは芯がよく折れました。
素早く書くことには鉛筆より劣っていた時代がありました。
実際、速く書くにはシャーペンは使いにくいところがあります。芯が折れるとか紙が破けるなどのことがあります。
文房具は時に子どもたちの学習を支えてくれる大事な道具ですが、それが遊び道具になったり、授業の集中を邪魔したりする側面も持っています。
例えば、高価なシャーペンが壊れてその責任が問われることになったとか、いろいろなシャーペンが登場し、購入して楽しむほうに流れてしまったとか、鉛筆でちゃんと書けない子に限ってシャーペンをやたらと持っているなど。
シャーペンを禁止しないでいると、筆箱の中はシャーペンとボールペンだけになる子どもはけっこういます。
鉛筆を使う習慣がなくなっていくことになるでしょう。
教師の側から見ると、シャーペンは子どもたちの玩具にされることはあり得ます。面白半分に分解することもあります。また、壊れたら遊び道具に変身です。
こういったことは小学校生活では、珍しいことではありません。
このように玩具にされたり問題になったりしそうなもので、でも筆記用具としては使用できるもの。こういうものは基本的に教室には持ち込まないほうが無難です。
今現在も禁止されている傾向の文房具(シャーペンを除く)は以下の通り。
- 練り消し
- サイコロ鉛筆
- バトル鉛筆
- ロケット鉛筆
- ボールペン
- 折り畳み式の定規
- おもちゃの消しゴム
日本の小学校の子どもたちは規律の中で学校生活を送ります。子どもたちの判断力や思考力が未熟なことを考慮して、学習や活動に集中できるように環境を整える必要があると思います。
ところが、なんでもいいと言うふうにしてしまうと自らを律する力が乏しいために学習に集中できなくなります。
そのため、余計なものを持ち込まない、といった環境が小学校で重視されています。ゆえに、シャーペンも禁止されることが多いのです。
これはいいことなのかよくないことなのか、国民性なのか、人に流されたり自己の考えを主張できなかったりする傾向が多いにあります。
教育上、規則によって環境を整えることは必要なことですが、考えることのできる子どもに育てていくことが教育のねらいでもあります。
小さなころから物事をきちんと自分で考え、判断し、行動する力をつけていく教育が本当に必要です。
学習での鉛筆のメリット・デメリット
鉛筆使用のメリットは
字を書くことを始めた小学生にとって、鉛筆は筆記具として適切です。
- 持ちやすい、指導しやすい、壊れない
- 安価である
- 一本を使い続けることで物を大事にすることにつながる
- 書くということの基本動作(削って用意することの大切さ)
- 小学生の学習(漢字練習や計算練習など)には適している
とにかく、丁寧に使わない状況でも壊れることがない。
以前は、鉛筆を小刀で削って使用することで小刀などのナイフの使用経験を付加価値をしていたが、今ではかえって危険とされてしまいました。小さなシャープナーで削ることが主流です。
鉛筆使用のデメリットは
鉛筆のデメリットはそれほど多くありません。
- いちいち削らないと細い字が書けない
- 削りかすの始末がめんどう
- 安すぎる値段の鉛筆は質が悪い(鉛筆削りで削ると芯が割れることが多い)
このくらいしかデメリットはありません。実際に鉛筆を使用していて面倒で大変ということはありません。
シャーペンの便利さに押されているという点がデメリットぐらいなものです。
学習でのシャーペンのメリットとデメリット
シャーペンのメリットは
シャーペンのメリットは削りかすの始末がいらないことが第一です。
- シャーペンの良いところは、いちいち削らなくてもいいということ
- 芯も何本も収納できるので、いつでもどこでも使用できる
- 1㎜以下の芯の細さなので、きれいな線で細かい字まで書ける
- 様々な太さがあるので、握りやすいものを選ぶことができる
- 芯も折れにくいものが作られるようになってきた
シャーペンが普及し始めたころと違って、今現在では、シャーペンは実に進化しています。
シャーペンとボールペンが一体化したものや高級感があふれるもの、筆記具として長く愛着をもって使用していくことができるようなものは以前からありました。
しかし、今では、鉛筆のような感覚で筆記できるようなものや鉛筆かと思うように外見が作られたもの、しかし、なめらかに筆記できるというものが多くなってきています。
文房具が実に多様化していて、シャーペンでも数十種類もあり、選ぶ楽しみが生まれています。
使用することよりも所持していることや集めることを楽しむという一面をもたらしています。
シャーペンの歴史
2022年サッカーワールドカップで日本はクロアチアに惜しくも負けました。本当に残念なことです。クロアチアってどんな国なのか、あらためて調べてみました。
シャーペンとクロアチアが関係があったのです。今のようなノック式のシャーペンを発明したのがクロアチア人だそうです。
クロアチア人のSlavoljub Eduard Penkalaさんが、1906年にオートマチックのノック式シャープペンシルを発明し、シャープペンシル開発の父と呼ばれているそうです。
シャーペンのデメリット
小学校の学校生活上、シャーペンのデメリットを挙げてみます。
- シャーペンは先が細いので筆圧を加えると芯が折れやすい
- 子どものものを成長段階上、壊わしてしまう可能性が大きい
- 先が金属でとがっていることが危険性を高めてしまう
- 様々なシャーペンがあり、玩具感覚に陥ることも考えられる
- 鉛筆に比べ、高価なものがあり、小学生には適さない
- 安いものは壊れやすく、程度のいいものは500円前後と決して安価ではない
- シャーペンを認めた場合、鉛筆の使用が減り、使わないようになっていく
小学生の1年生から6年生までは、成長レベルの差が大きすぎて、どの学年にも適応するものではないと思います。
一年生はきちんとした持ち方を勉強するのでシャーペンの必要性は低いでしょう。むしろ、鉛筆というものをしっかりと理解するべきです。
高学年においてはシャーペンを使いたくなってくるでしょう。
シャーペンは芯が細く硬く、硬く平らな面での使用が必要です。そのためには下敷きなどを使います。しかし、今の子どもたちは、下敷きはほとんど使わないので、シャーペンは使いにくいでしょう。
そもそも鉛筆使用にも下敷きが必要ですが、使わなくても書けることから面倒くさいのか、使わない子が多いですね。
シャーペンを使うことで下敷きの使用が習慣化されるかもしれませんね。それは、いいかもしれません。
しかしながら、鉛筆は、
- すぐに書ける
- 所持しやすい短めの鉛筆
- 下敷きなくても書ける
- 塗りつぶし効果
- キャップがあるから安全
- 仮に失くしてもあきらめがつく
など子どもの筆記用具としての利点が多いと言えます。
屋内屋外の様々場面で書くことが多い小学生にとっては、シャーペンは必ずしも使い勝手はいいとは言えません。
まとめ 小学校では鉛筆を使ったほうがよい
小学生はまだ筆記が十分でなく、さらさらと書くことは苦手です。一文字一文字きちんと書こうと集中します。
そんな段階だからこそ、芯が折れにくくて、いちいち芯を出すこともなく、集中して書くことに鉛筆は適しているのではないでしょうか。
芯の折れにくい鉛筆も登場しています。そもそも安価です。雨にぬれても、水に落としてもすぐに使えます。
こう考えてくると、小学生の様々な状況に適応しているのが、鉛筆だと思いませんか。
シャーペンは、その使いやすさと便利さで鉛筆にはないものを持っていますが、ある程度筆記に慣れてきた段階で使用するものかと思います。
高学年になったら、筆記用具に加えていくことは問題はないと思います。
ただし、筆記用具は子どもの関心を引くものが非常に多くなっています。本当に子どもの学習に適しているのかを見定める必要はありますね。
小学生は筆記用具に適したよいものを選び、それらを上手に活用し学習効果を上げる道具として、子どもたちが学んでいくことが大事なことです。
筆記用具をきちんと道具として使っていくことを学んでいく段階が小学校です。
そんな学びの場においては、使う道具は造りがシンプルで壊れにくく、実用的であることが一番必要なことではないでしょうか。さらに、安価であることは言うまでもないことです。
鉛筆とシャーペンはそれぞれに良さがあります。小学生の発達段階に立ってメリットとデメリットを理解し、鉛筆とシャーペンの使い分けなどを考えていきましょう。
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